
どうもアゲハです。
病気休暇から復帰した私は以前、上司から次のような言葉をかけられました。
次に休むようであれば、他の道を探しておいた方がよい
次に病気休暇をとるようであれば、”クビ”だと言いたいのでしょう。
しかし、病気休暇を取得することによって免職にされることはあるのでしょうか。
公務員の病気休暇と免職処分
病気休暇とは、負傷又は疾病のために勤務に服することができない職員に対する休暇です。
医師の診断等にもとづき、最小限度必要と認められる期間が与えられます。
休暇中は治療に専念することを目的としています。
病気休暇については、地方公務員法第24条第5項に基づき、それぞれの自治体が条例で定めています。
そして、どの自治体も病気休暇の期間は90日までとなっています。
地方公務員法抜粋
(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)第二十四条 職員の給与は、その職務と責任に応ずるものでなければならない。2 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。3 職員は、他の職員の職を兼ねる場合においても、これに対して給与を受けてはならない。4 職員の勤務時間その他職員の給与以外の勤務条件を定めるに当つては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。5 職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。条例抜粋
(休暇の種類)
第11条 職員の休暇は、年次有給休暇、病気休暇、特別休暇、介護休暇、介護時間及び不妊治療休暇とする。
(病気休暇)
第13条 病気休暇は、職員が負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合として規則で定める場合における休暇とする。
2 病気休暇の期間は、規則で定める。
3 病気休暇については、規則で定める期間を超えた場合、第18条の規定にかかわらず、その勤務しない1時間につき、同条例第23条に規定する勤務時間1時間当たりの給与額を減額する。
施行規則抜粋
(病気休暇)
第13条 条例第13条第1項の別に定める場合は、次の表の左欄に掲げる場合とし、同条第2項の別に定める期間は、同表の右欄に掲げる期間とする。
(2) 私事による負傷又は疾病(予防接種による著しい発熱等の場合を含む。)
医師の証明等に基づき、引き続き90日を超えない範囲内で必要と認める期間
一方で、免職となる条件は地方公務員法で次のように規定されています。
- 人事評価の成績が悪い人
- 病気で働けない人
- 公務員として適格でない人
- 人員削減
上司が言うとおりに、病気休暇を取得することにより、クビになるのであれば、2番が当てはまります。
以下、地方公務員法の抜粋です。
地方公務員法(降任、免職、休職等)第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合三 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合2 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合二 刑事事件に関し起訴された場合3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めなければならない。4 職員は、第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。
しかし、病気休暇を取ったからといってすぐに免職になることはないようです。
というのも、2番の心身の故障により、免職にするには医師の診断が必要です。
この人はもうダメだ
と、本当に働けない状態なのかを確認しなければいけません。
以下、条例の抜粋です。
(降任、免職、休職及び降給の手続)
第3条 任命権者は、法第28条第1項第2号に該当するものとして職員を降任し、若しくは免職する場合又は同条第2項第1号の規定に該当するものとして職員を休職する場合においては、医師2名を指定して、あらかじめ診断を行わせなければならない。
2 職員の意に反する降任、免職、休職又は降給の処分は、その旨を記載した書面を当該職員に交付して行わなければならない。
(休職の効果)
第4条 法第28条第2項第1号の規定に該当する場合における休職の期間は、3年を超えない範囲内において休養を要する程度に応じ、個々の場合について任命権者が定める。
2 任命権者は、前項の規定による休職の期間中であっても、その事故が消滅したと認められるときは、速やかに復職を命じなければならない。
3 法第28条第2項第2号の規定に該当する場合における休職の期間は、当該刑事事件が裁判所に係属する間とする。
4 法第22条の2第1項に規定する会計年度任用職員に対する第1項の規定の適用については、同項中「3年を超えない範囲内」とあるのは、「法第22条の2第2項の規定に基づき任命権者が定める任期の範囲内」とする。
第5条 休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。
それでは、他に私が病気休暇を取得することにより免職になる可能性はあるのでしょうか。
他の可能性としては、3番の「公務員の適格性」です。
こいつは仮病を使っているから、クビだ!
という感じで、職場の裁量でクビにされるのでしょうか。
地方公務員法第28条第1項第3号において、規定される「公務員の適格性」については、次のような最高裁判例があります。
最高裁昭和48年9月14日第二小法廷判決・民集27巻8号925頁
- 地方公務員法二八条に基づく分限処分と任命権者の裁量権
二、地方公務員法二八条一項三号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」の意義
三、地方公務員法二八条一項三号該当を理由とする分限処分が降任である場合の任命権者の裁量権
- 裁判要旨
- 一、地方公務員法二八条に基づく分限処分は、任命権者の純然たる自由裁量に委ねられているものではなく、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいてされた場合、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断された場合、あるいは、その判断が合理性をもつものとして許容される限度を超えた場合には、裁量権の行使を誤つたものとして違法となる。
二、地方公務員法二八条一項三号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、または支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解すべきである。
三、地方公務員法二八条一項三号に該当することを理由とする分限処分が降任である場合には、それが免職である場合に比して、適格性の有無についての任命権者の裁量的判断の余地を比較的広く認めても差支えない。
この判例は、降格処分の取り消しが棄却された判例で、免職の話とは異なる内容です。
ただ、裁判要旨一の中で書かれているように、「任命権者の順善たる自由裁量に委ねられる」ものではないようです。
つまり、明確な違反や客観的な証拠がない限りは処分を受けないようです。
具体的に言えば、
- いつも上司に逆らう
- 与えられた仕事をまったくしない
- 明らかに言動がおかしい
といった人です。
そして、裁判要旨三で書かれているように、免職の場合は判断が慎重になるようです。
以上のことから、病気休暇を取ることだけで即座に免職となる可能性はまずないということになります。
問題行為など他の原因により、免職となる可能性があるとしても、病気休暇を取得したからといって免職なることはないのです。
勤務評定も正常であり、不祥事を起こしていない状態であれば、心配することはありません。
公務員の休職と免職
とはいえ、これが休職であれば、話は変わってきます。
休職は、免職や降任にならぶ、分限処分のひとつです。
病気休暇と同じで仕事を休むことに変わりはありませんが、病気休暇とは異なります。
以下、条例の抜粋です。
(降任、免職、休職及び降給の手続)
第3条 任命権者は、法第28条第1項第2号に該当するものとして職員を降任し、若しくは免職する場合又は同条第2項第1号の規定に該当するものとして職員を休職する場合においては、医師2名を指定して、あらかじめ診断を行わせなければならない。
2 職員の意に反する降任、免職、休職又は降給の処分は、その旨を記載した書面を当該職員に交付して行わなければならない。
(休職の効果)
第4条 法第28条第2項第1号の規定に該当する場合における休職の期間は、3年を超えない範囲内において休養を要する程度に応じ、個々の場合について任命権者が定める。
2 任命権者は、前項の規定による休職の期間中であっても、その事故が消滅したと認められるときは、速やかに復職を命じなければならない。
3 法第28条第2項第2号の規定に該当する場合における休職の期間は、当該刑事事件が裁判所に係属する間とする。
4 法第22条の2第1項に規定する会計年度任用職員に対する第1項の規定の適用については、同項中「3年を超えない範囲内」とあるのは、「法第22条の2第2項の規定に基づき任命権者が定める任期の範囲内」とする。
第5条 休職者は、職員としての身分を保有するが、職務に従事しない。
2 休職者の休職期間中の給与については、条例等の定めるところによる。
分限休職処分は3年が上限となっていて、回復に応じて復職を命じられます。
そして、復職に応じることができなければ、身心の故障として、免職となります。
病気休暇取得による免職は可能性が低いにしても、分限休職処分を受けたあとは注意しないといけません。
公務員の病気休暇と休職のリセット
病気休暇と分限休職処分にはそれぞれリセットの期間があります。
公務員としてやり直すためのチャンスです。
特に最近ではストレスで倒れる公務員が増えているので、
2度目はないぞ
、と言っている場合ではありません。
公務員の病気休暇のリセット(クーリング期間制度)
病気休暇にはクーリング期間制度が設けられています。
制度の趣旨としては、病気休暇の濫用を防ぐための制度です。
病気休暇と出勤の無限ループを防ぐためです。
病気休暇が8日以上である場合、20日以上の勤務をしなければ、リセットされません。
新たに取得した病気休暇の日数を、前回取得した病気休暇に加算されます。
逆を言うと、病気休暇を取得してから20日間出勤すればリセットされるということです。
ちなみに、20日間の出勤の内容は、有給休暇を取得した日数も含まれるようです。
なお、自治体によっては、いまだにクーリング期間制度が導入されていないところもあるようなので、ご自身の自治体をご確認ください。
≪クーリング期間制度≫
病気休暇を取得していた職員の病状が回復して職務に復帰したが、病気が再発して再び病気休暇を取得することとなった場合、復帰した日数によってはクーリング期間制度が適用される。
この制度は、病気休暇を断続的に繰り返して取得するという濫用を防止するためのもので、具体的には、連続する8日以上の期間の病気休暇を取得した職員が、その病気休暇の期間の末日の翌日から、実勤務日数が20日に達するまでの間(クーリング期間)に、再び病気休暇を取得したときは、前後の病気休暇期間を通算するというものである。
再度の病気休暇がクーリング期間内であれば、前後の病気休暇の期間は引き続いているものとして日数を通算し、クーリング期間外であれば再び病気休暇を取得した日から改めて日数をカウントすることとなる。
公務員の休職のリセット
分限休職処分に対しても、リセットの期間は定められています。
しかし、分限休職期間のリセット期間は、自治体により異なります。
半年のところもあれば1年のところもあるようです。
こちらもご自身の自治体の条例をご確認ください。
以下は条例抜粋です。
半年バージョン(休職の期間の通算)第5条 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条第2項第1号の規定に該当することにより休職となった職員(以下「病休職員」という。)が、 条例第7条の規定による復職をした後当該休職の原因となった負傷又は疾病と同一の負傷又は疾病により再び休職することとなった場合において、当該休職の原因が次の各号に掲げる負傷又は疾病であって、それぞれ当該各号に定める期間を経過しないときは、当該復職をした期間はなかったものとして、当該復職後の休職の期間は、当該復職前の休職の期間に引き続いて更新されたものとみなす。(1) 職員の勤務時間、休暇等に関する条例(平成7年市条例第1号。次号において「勤務時間条例」という。)別表第1第2号の項アからウまでに規定する負傷又は疾病 復職をした日から起算して180日(2) 勤務時間条例別表第1第2号の項エに規定する負傷又は疾病 復職をした日から起算して90日1年バージョン第1条 この規則は、条例の施行に関し必要な事項を定めるものとする。(休職期間の取扱い等)第2条 傷病(精神疾患等であって市長が定めるものに限る。以下同じ。)により地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条第2項第1号に該当するものとして休職した職員が、復職した日から1年以内に再び傷病により同号の規定に該当するものとして休職した場合における、条例第3条第1項に規定する休職の期間については、復職前の休職の期間と再度の休職の期間を通算するものとする。ただし、再度の休職の理由となった傷病が復職前の休職の理由となった傷病と明らかに異なる場合は、この限りでない。
公務員の病気休暇と休職に関する注意
ここまで病気休暇と分限休職処分について紹介しました。
とりあえずは、病気休暇が90日、休職は3年までということの理解だけで十分でしょう。
そして、最後に補足の注意点を紹介します。
公務員の病気休暇の注意点
病気休暇を取得してから90日で分限休職処分を受けます。
しかし、例外があります。
90日を待たずに分限休職処分を受ける可能性があるのです。。
以下、鹿児島地裁平19・5・22判決です。
病気休暇の繰返しの取得を防ぐために
[1] 上限期間の設定
前述のとおり、病気休暇は最小限度必要と認められる期間、その治療に専念させることを目的とする休暇である。そして、国においてその取得日数に上限が設けられた趣旨は、長期にわたる病気休暇を取得する職員の割合が増加傾向にあり、欠員補充が可能となる分限休職処分(休職者は条例定数外とすることが通例)との役割分担を明確化するためである。
つまり、上限を設けず病気休暇を付与することは、国の現行制度の趣旨を逸し、併せて、病気休暇によるアブセンティイズムの長期化を招くということである。
裁判例においては、病気休暇の残日数がある中で行われた分限休職処分を適法としており、判決では「職員が病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休養を要することが明らかな場合に、病気休暇の承認をしないで休職処分をしたとしても、法の趣旨に反するものではない」としている(鹿児島地裁平19・5・22判決)。
本事例は規程(本事例では条例に基づく規則)による上限期間の設定が前提とされていることから、上限期間の設定は、病気休暇から分限休職処分へ移行する際の判断基準及びその根拠となり得る。規程により上限期間を設定しないまま、運用で分限休職処分移行の判断を行うには基準が曖昧になりかねない。
そして、病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休業を要することが明らかな場合には、その時点から分限休職処分へと移行すべきである。
この判例では、残りの病気休暇日数があっても、休職処分を受ける可能性を示唆しています。
仮に、病気休暇を2カ月しか取得していないといっても油断してはいけません。
万が一、残りの病気休暇で療養ができないと判断されたら、即座に分限休職処分を受ける可能性もあるのです。
公務員の休職の注意点
休職処分がリセットされているとしても油断してはいけません。
休職が明けたのちに、ふたたび病気休暇を取得しようとしても認められない可能性があります。
以前に受けていた分限休職処分の期間に、休職日数が加算される可能性があります。
すべては人事担当の判断になりますが、病気が継続していたと判断されれば終わりです。
分限休職処分の判断
心身の故障のある職員に対して、病気休暇と分限休職処分のいずれによるか、また、病気休暇で療養中の職員をいつ分限休職処分とするかであるが、裁判例においては、「(地公法第28条)第2項第1号に定める私傷病休職の場合の処分事由が被処分者の状態等に関する一定の評価を内容として定められていることを考慮するときは、同条に基づく休職処分につき、任命権者には当該趣旨・目的に照らして合理的な裁量が認められるというべき」としている(大阪高裁平27・5・14判決)。
前節で述べたとおり、病気休暇の残日数で賄いきれない長期の休業を要することが診断書等で明らかになった場合等は、アブセンティイズムの解消の観点から、速やかに分限休職処分を行うべきである。
アブセンティイズムは欠勤という、意味です。
病気休暇や分限休職処分は、どちらも人事担当が決定する事項です。
ゆるい人事担当であれば、あまり気にする必要はありません。
が、注意しておきましょう。
公務員の病気休暇と休職
とりあえず、病気休暇を取得しているだけではクビになることはないようです。
安心しました。
これで、人事担当職員からの私の評価が地獄だったら、終わりですが。
とはいえ、好き勝手しすぎるとクビになる可能性はあるようです。
特に分限休職処分の直後は注意しておきたいものです。
ちなみに、私は13年間の間で病気休暇を6回、休職2回くらっています。
私よりも病気休暇と休職の数が少ない方はまだいけるかもしれません。
これだけ休んでもクビにならないところは公務員である利点です。
ただ、休暇を取るたびにやはり不安は生まれます。
いつクビになるか分からないという不安が大きくなる一方です。
なので、最近では改めて
休めるからそれでいい
という話ではないと感じます。
- 公務員は自由に休めてうらやましい
- 病気休暇をとってもクビにならないからうらやましい
と言われても組織に縛られている状況に変わりありません。
結局、自分がどれだけ気楽に過ごせるかが大切です。
たしかに休んでは出勤を繰り返すことで、給料はもらえます。
しかし、頭のどこかで必ず組織を気にし続けなければいけないのです。
楽だから自由
であるとは限らないのです。
本当の自由を手に入れたいのであれば、誰にも文句を言われない生き方をしていく必要があるのだと感じています。
そして、その答えが起業です。
自分ひとりで稼いでいける生活です。
公務員の病気休暇や休職処分には救われてきましたが、
そろそろ覚悟を決めないといけないな
考えているところです。
もしよろしければ、みなさんも一緒に自由をてにいれませんか。
誰にも気にせず休める日を一緒につかみましょう。
“【公務員の病気休暇や休職による退職】どれだけ休めばクビになる?” への1件のフィードバック